二次生成物


1 二次生成物について

 

2 さまざまな鉱物・二次生成物

 

つらら石・鍾乳石

カーテン

ボックスワーク

石筍

石柱

フローストーン

リムストーン・グール

キャノピー型鍾乳石

ケイブパール・ケイブピソライト

コラルロイド

ケイブコーラル

ヘリクタイト・ヘリグマイト

ムーンミルク

浮遊カルサイト・泡状カルサイト

シールド

アラゴナイト

アンソダイト

ジプサム

シャンデリア

トラバーチン

トゥファ

 

 

 


1 二次生成物について

二次生成物とは

 

二次生成物とは、洞窟内の生成物の総称である。英語ではcave formation (ケイブフォーメーション)もしくはspeleothem (スペレオゼム)sinter (シンター)という。秋吉台は石灰岩台地であり、そこに形成される洞窟は、石灰岩でできている。石灰岩の成分(CaCO:炭酸カルシウム)は酸に溶けやすい性質があり、微量の二酸化炭素を含む雨水によって洞窟が作られる。炭酸カルシウムを溶かし込んだ水は洞窟の中で二酸化炭素を脱気して、方解石という鉱物を沈積させる。この方解石がつくるさまざまな形が二次生成物である。

 

二次生成物を意味する言葉

*ケイブ・フォーメイション:(Cave formations)。洞窟生成物。すべてのタイプの方解石、ジプサム、その他、希な洞窟鉱物を含む、洞内堆積物をいう用語。スペレオゼム (speleothem)と同義語。

*スペレオゼム: Speleothem)。すべての鉱物からなる洞窟堆積物をさす用語。鍾乳石(Stalactites)、フローストーン(flowstone)、フラワー(flowers);花状結晶。ジプサムなどからなるなどを含む。多くのものは主に水中の二酸化炭素濃度に関連し、炭酸カルシウムの沈澱の過程で形成される。

*シンター:Sinter。すべてのスペレオゼム(二次生成物)やトラバーチンを含む、流れる水から形成される硬い鉱物の堆積物。カルク−シンター (Calc-sinter)は特に炭酸塩堆積物のことをいう。

 

二次生成物の種類

二次生成物は、1。成因による分類、2。形態による分類、3。結晶学的な分類がなされ、生成物の名前それぞれが慣用的に使われているため、混乱を生じていることもある。とくに、違う生成物であっても、形態が同じことから同じ名前をもっていることがある。

 

炭酸カルシウムの生成過程

 もっとも重要な点は、3の反応である。この式は単なる化学式によって炭酸カルシウムが沈積するのではなく、COの溶けている量によってそれが沈積するか否かが決まる。

 

1。水に二酸化炭素が溶けて酸性になる。 

COHOHCO 

 

2。石灰岩が溶かされる。溶食形態(一次形態)を残す。

aCOHCOCa2+2HCO

                                                                                                        

3。炭酸カルシウムが水に溶けている状態から、COの脱気によって炭酸カルシウムの沈積が行われる。

Ca2++2HCOCaOHOCO 再度溶けるときには逆の反応がおこる。

 


2 さまざまな鉱物・二次生成物

 

鍾乳管(ストロー、ストロー管またはソーダストロー)straw stalactite
 天井から細長い棒のようにぶら下がる生成物。太さはそれを形成する水滴と同じ45mmくらいで、中は本当にストローのような空洞になっており、外側は、厚さ051mmの方解石の結晶でできている。比較的成長が早く、熱帯ほどその傾向が強い。世界一長いストローはオーストラリアのイースター洞のもので、6mもある。

 

つらら石・鍾乳石 stalactite
 洞窟の天井からつららのように垂れ下がっている生成物。これは地下水がストローの外側をつたわって流れるとき、方解石がストローの外壁に、薄い膜状となって沈着することをくりかえして太くなっていって形成されたもの。このため、鍾乳石の中心部には、ストローであったころの名残として、小さな穴があったり、直径5mmくらいの透明な方解石の結晶があったりする。
一般に鍾乳石と言った際には、石灰分からなる生成物すべてをさす場合があり、形態的にはつらら石という場合が多い。

 

カーテン curtain  

天井や洞壁から、名前の通りカーテンのひだのように垂れ下がっている生成物。傾斜のある天井や洞壁から地下水が広がらずに線を描いてに流れるときに形成される。曲がったり波うったりしているものが多い。白と茶色の縞模様をしているものをベーコンと呼ぶこともある。白い所は方解石の純度が高く、茶色いところは不純物(主に鉄酸化物)が混じっている。

 

ボックスワーク box work

天井に網の目状の割れ目があるとき、その割れ目からしみ出る地下水によってカーテンが形成されると、ボックスワークと呼ばれる。よく成長しているものは、下から見ると、ふたの無い箱をいくつもつなげて、逆さまにしたような形になっている。また、溶食形態で石灰岩中の方解石脈が、周囲の母岩との間で差別溶食を受けて残ったものもボックスワークとよばれている。

 

石筍 stalagmite

石筍は、滴下した地下水が飛び散るときや膜状に広がるときに、中の二酸化炭素が抜け、方解石が沈殿することによって生成し、上へ、上へと成長する。多くの洞窟で見られる。

石筍には滴椀(splashcup)ができているものがある。滴椀というのは、水滴が落ちる所で、方解石の沈殿を妨げているときや、方解石を再溶解している状態でできる窪みのことである。

また、水滴の飛び散り方によってはカヌライト(conulite)とよばれる薄い囲いをもったコップ状の石筍の一種が生成することがある。これは粘土堆積物の上に生じていることが多く、粘土中に穿たれた浅い窪みの周りに方解石が薄く沈殿し、粘土が流れ去った後も囲いのみが成長したもののようだ。

泥旬は石筍の泥バージョン。泥の混じった滴下水から水分と二酸化炭素が抜けて固まったもの。

 

石柱 column
 鍾乳石と石筍がそれぞれ成長し、一本につながったものを石柱(column)という。秋芳洞の黄金柱が有名。石柱と呼ぶにあまりにも短いものは、英語ではスタラグタイト(鍾乳石)とスタラグマイト(石筍)がくっついたものということで、スタラクトスタラグマイトという別名もある。

 

フローストーン flowstone
 滝のように石が流れているように見える生成物。洞壁や洞床の上に炭酸カルシウムの溶けた地下水が流れ、その表面から二酸化炭素が抜け、炭酸カルシウムの成分が結晶して形成される。表面は滑らかか、しわ状(マイクログール)になっている場合が多い。形成する過程の不連続によって断面は縞状になっているものが多い。           

 

リムストーン、グール RimestoneGour

リムストーンとグールは同じものを指す。フローストーンと同じような生成物であり、一般的に炭酸カルシウムからなる。多くの洞窟で見られる。秋芳洞の百枚皿や千町田が有名。プールの淵を薄くあふれる水から炭酸カルシウムが沈積にすることよって、その淵に沿って発達する。いったん生成が始まると自ら大きくなり始め、数mの幅、高さをもつダムへと発達することがある(リムストーンダム)。逆にとても小さなグールのことはマイクログールという。マイクログールはフローストーンなど他の生成物の表面に形成して、しわのように見えていることもある。グール内のプールではカルサイトの沈積がより起こりやすく、結晶やケイブパールができたりする。

 

キャノピー型鍾乳石 canopy
 砂や泥などの砕屑物の上に形成されたフローストーンのうち、やがて下の砂や泥などが流れ去って天井や壁に板状に張り出したものをキャノピー型鍾乳石という。またそれが床のようになっている場合にはフォールスフロア(擬床)と言い、壁と壁をつなぐブリッジを形成することもある。キャノピー型鍾乳石があると、過去にそこまで堆積物があったということがわかる。また、壁からキャノピー型鍾乳石が張り出しているものをトラバーチンと呼ぶこともある。

 

ケイブパール cave pearl)または、ケイブピソライト

天井から常に水滴が落ちているような、浅い水溜りの中にできる、鍾乳石の変り者。1mm3cm位の真白い玉。表面がつるつるしたものをケイブパール、ざらざらしたものをケイブピソライトという。洞床や洞壁にくっついてできるものではなく、砂や礫を核として、うすい方解石の層が何重にもかさなっていることから、雪だるまのように転がって成長すると考えられている。

 

コラルロイド coralloid

ケイブコーラル、ポップコーン、カリフラワー、房状鍾乳石、雲状鍾乳石などと呼ばれる生成物一般をさす。大きさ、形はさまざまである。成因は、洞窟の割れ目沿いや、多孔質※1の洞内シルト2からしみ出る地下水」による、というムーアMoore(1973)の説と、プールなどの水面下にケイブコーラルが見られることから、水面下で生成され、地下水面より上にある洞窟や鍾乳石にケイブコーラルがあれば、そこは昔水没していたかプールのようなものがあった、というブレッツ(1956)説があるが、形態、規模によって異なる。

 

※1 多孔質…小さな穴が大量にあること

※2 シルト…砂と泥の中間くらいのもの

 

ケイブコーラルcave coral

洞壁に小さなサンゴのようなものがあれば、それがケイブコーラルである。大きさは5mm2cm。もろく剥がれ落ちやすい生成物であるため、チムニーなどをして洞壁に力を加えるときには注意が必要。

 

ヘリクタイト helictite・ヘリグマイトheligmite 

太さ2mm5mmの細く曲がりくねったモヤシのような生成物。方解石の結晶からなる。上下左右育つ方向はさまざま。空気の流れが無く閉鎖的な洞窟にでき、湿度が高いほどよく育つ。鍾乳石や石筍、フローストーンから伸びていることが多く、床にできるものをヘリグマイト、天井からはえているものをヘリクタイトという。その奇妙な形のためか、両方ともの別称で、エキセントリック:Eccentricとも呼ばれる。成因は、管がとても細いため、毛細管現象によって上がってきた水が先端に出て結晶化するものといわれる。

 

※ 毛細管現象…紙や布などの一部を水につけたとき、その繊維を伝わって水が水面より上まで吸い上げられるのと同じ原理。

 

ムーンミルク moon milk 

炭酸塩の結晶と水の混合物。主として方解石の微細な結晶からなる。白い紙粘土のようで、乾いたものは粉状になっている。指で押すと沈み込む。中には細菌が多く住んでいることから、成因に生物が関与していると考えられている。山梨の青岩鍾乳洞、熊本の大金峰洞などが有名であり、昔は特定の洞窟にしかないものであるとされて来たが、最近ではどの洞窟でも発見される可能性がある。

 

浮遊カルサイト・泡状カルサイト raftbubble

石灰洞で、流れがほとんどないプールの水面に、方解石の微細な結晶や非常に薄い膜状の結晶が浮かんでいることがある。これが浮遊カルサイトである。また、浮遊カルサイトが浮かんでいる水面に水滴が落ち、その時にできた小さな気泡の周囲に浮遊カルサイトが付着すると、球状の薄膜をもった泡状カルサイトが生成する。

 

シールド shield

円盤が洞壁や天井から突き出したような形の生成物。洞窟の割れ目から染み出る水によって、2層の薄いカルサイトの円盤が形成され、その円盤の間を地下水が毛細管現象で伝わることで形成されるとされている。一般に円盤の下にはフローストーンやつらら石が形成される。熊本の球泉洞、平尾台の千佛洞のものが有名だが、一般ケイバーに認知されていないだけである可能性が高い。

 

アラゴナイト Aragonite 

生成物の名前としばしば混同されているが、アラゴナイトは鉱物名である。つまり、アラゴナイトはカルサイトと同じように生成物を形作るということだ。成分はカルサイトと同じCaCO3である。カルサイトと結晶系が異なる「多形」の鉱物。ストロンチウムなど、不純物が存在するときにアラゴナイトになると考えられている。洞窟の中でもっとも一般的にみられる形態は、小さな放射状の結晶(アンソダイト)で、表面は水気のある薄層で覆われているが、流れ出してはいないくらいの、湿度の高い洞窟に形成される。最近では、マグネシウムイオンの存在がその生成に関わっていると考えられている。

 

アンソダイト Anthodites 

アラゴナイトの放射状の結晶。たいていは1mm20mmの長さの鋭い針状結晶からなる。いくらかの洞窟に散点的に形成されるが、透明な白い結晶が岩石やカルサイトの表面を隅々まで覆うような、著しい発達をしたりもする。最近の定義では、フロストワーク(frostwork)と呼ばれるものにこれが含まれる場合もある。

 

ジプサム Gypsum

化学式CaSO4の鉱物。いわゆる医療用のギプスと同じ成分である。洞窟内では硫酸イオンがないとできない。硫酸イオンの供給源については、石灰岩に含まれる不純物やコウモリの糞であるグアノ、深層水などが考えられている。

 

シャンデリア chandelier

ジプサムフラワー(ジプサムが花のような形に結晶したもの)の集合体。白く、数mの大きさで天井からぶらさがっている。

 

トラバーチン Travertine

硬い石灰質の鉱物が流水から堆積したもの。シンターのうち、石灰質のものをさし、軟らかいトゥファと対照的である。この用語は、通常は洞外で形成されたものをさし、植物や苔が水中の二酸化炭素の固定を行い、その沈積させる原因となる。それゆえ、トラバーチンは穴だらけの構造をなす。トラバーチンは一般的にgour dam(グール:リムストンプールのこと)のような滝を形成する。

 

トゥファTufa 

外国ではトラバーチンと同義語。多孔質の石灰質堆積物をさす。トラバーチンのうちやわらかいものをトゥファと呼んでいる。最近になって、再定義がおこなわれるようになってきた。九大の吉村教授らのグループは、生物誘導型の結晶作用でできたものについてトゥファと呼ぶことを提唱している。日本ではこの定義が広く用いられており、本項目の説明もこれにしたがう。黄土色〜乳白色をしており、やわらかく、指で押すとつぶれる。形成される環境によっては縞状になる。

洞壁に付着したシアノバクテリアが光合成をするとき、水中に含まれるCOを消費することで、同様に水中に溶解している炭酸カルシウムが析出し、それとシアノバクテリア自身が出す粘液とくっついてトゥファができる。だから、ある程度光が届くところにしかできない。秋吉でもこれから多く発見されてゆく可能性が高い。

 

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