寺山の穴新洞探査計画

石原与四郎


はじめに

 寺山の穴は秋吉台西部域,狭義の西台の北部に位置する.大きく分けて4つの主洞からなり,多くの地底湖があり,秋吉台で最も有名な横穴の一つである.

 山口大学洞穴研究会では,1994年7月から,寺山の穴第3主洞にあるプールの水位を下げ,新洞部を発見しようと試みている.水位を下げる方法は藤井厚志氏考案によるエアダクトホースを用いたサイフォンを利用した.この方法は秋芳洞のガントレット支洞を発見するのにも用いられ(Caving Journal,),場所の選定さえ誤らなければ極めて有効な新洞探索手段だということが出来る.

 本稿は本来,山口ケイビングクラブ会報などに報告すべきものであるが,筆者の怠慢により長い間未公表にされてきた.今後,正式に発表する可能性もあり,このページでは,中間報告としてその調査,探索行程およびその結果を記す.本稿を報告するに当たって,北九州市立自然史博物館の藤井厚志氏には,調査,探索方法の示唆,および平行して行われた寺山の穴周辺の水系調査(今後報告する予定)について極めて有益な助言およびご指導をいただいた.記してここに厚く御礼申し上げる.また,いまだ正式な報告を行っていないことに,調査に参加された洞研部員および藤井氏にはお詫びする次第である.


調査について

 探査方法は上記に示したCaving Journalに報告されたように,サイフォンを用いた水抜きにより行った.実際には,直径10cm程度のエアダクトホースを用い,作業を行っている.このようなシステムのサイフォンはしばしば風呂の中の水を抜いたりするときに用いられるが,まさしく同様なものである.対象とすべきプールにホースを全て沈め,一方の端を栓し,その端をプールの水位より低い位置に持ってくる.そのことによってプールと排水口に水頭差を生じさせ,その圧力差によって上位にあるプールの水位を下げるわけである.


寺山の穴第3主洞のプール

 寺山の穴第3主洞には,大きく,3つの洞内地底湖がある.最も下流には第1主洞に通じるプールがあり,中央部には寺山の穴最大の規模をもつ大地底湖,さらに上流には水位レベルを一段上げたところに溜まり水を中心とすると考えられるプールがある.対象としたのは最も上流側に位置する,レベルが高い位置のプールである(写真).このプールは常に美しい青い地湖の様相を示し,その透明度も高い.また,同じ洞内における他のプールとのレベルの高さの違いも注目すべきものである.

 

 

 


調査メンバー

 藤井 厚志氏(北九州自然史博物館),石原 与四郎,入江 寛,佐伯考央,藤村 朋子,勝 晃司,諸岡英雄,田中敬子,岩佐宇志夫(以下山大洞研)

 

 探査は1994年7/10,7/13,9/23を中心に行われた.その後,一部のメンバーにより数回の作業が行われている.


探査過程

エアダクトホースの運搬

長さ20mのホースは大変かさばり,運搬は苦労する.ホースの運搬には5〜6人ほどの人数が必要である.場所は寺山の穴第1−第2連絡洞のクラック.

 ホースは長さぎりぎりで設置された

 対象としたプールからさらに下位にある水流まではかなりの距離があり,長さ20mのエアダクトホースはぎりぎりの長さで設置された.

 

 大量の水を吐き出すホース.

このように,かなりの勢いで水を抜くことが出来る.

 数時間後のプールの水位

上記の写真を撮影した数時間後にはここまで水位を下げることができた.しかし,プールの深さはまだ数mあり,新洞を発見するには及んでいない.

 最も水位が下がった時.

この写真の上端に見られるわずかな細い線が当初の水位を示す.ほぼ2mの水位を下げることに成功している.


終わりに

 以上のように,水位を下げるという点では当初考えたよりはるかに効率よく作業が行われたが,残念ながら,今のところ新洞部を発見するには至っていない.現在はエアダクトホースだけでは水位を下げることが出来ず,ビニールホースを設置したままである.

 このビニールホースで水位を下げることが可能であったとしても,まだプールの水位は深い.ケイブダイビングなどでの探検が必要となることが予想される.