秋芳洞第7新洞−葛ヶ穴連絡洞の発見
はじめに
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葛ヶ穴は美東町極寒山西麓に陥没ドリーネの底に開口する竪穴である.この竪穴の底には水流があることが知られており,従来から色素追跡などにより秋芳洞と深く関連する洞窟であるとされてきた.1999年3月1日,山口大学洞穴研究会とCAVE 88 PROJECTのメンバーは,この葛ヶ穴から秋芳洞につながるルートを発見した.本報告は発見の概要について簡単にまとめたものである.
*CAVE 88 PROJECT(代表:安田浩一)は,1994年から秋芳洞と成因的に関連の深い洞窟,また秋芳洞そのものを対象とし,調査活動を行っている団体である.1998年には葛ヶ穴の測量調査の報告を行っている.
調査参加者
石原与四郎 (CAVE 88 PROJECT,山口大学洞穴研究会OB,山口大学大学院理工学研究科D3)
大岡弘一 (山口大学洞穴研究会会長,山口大学理学部3年)
中野亜由美 (同部員,山口大学農学部2年)発見の概要
1999年3月1日,美東町極寒山にある竪穴の葛ヶ穴において,石原与四郎 ,大岡弘一,中野亜由美の3名が,渇水期におけるこの洞窟の状況調査を行っていたところ,葛ヶ穴が秋芳洞第7新洞に連結しているのを確認した.
発見されたルートは葛ヶ穴の最も西の端で,第7新洞にもっとも近いと考えられていた場所から続いており,距離にして約350mである.また,葛ヶ穴自体にも渇水により約200mの新洞部分を発見した.発見の意義
*秋芳洞の総延長が従来発表されていた7.5kmに,今回発見された通路の350m,葛ヶ穴上流部の200m,さらに葛ヶ穴の630mが加わり,約8.7kmになる.第7新洞の精密な測量が行われれば,さらに総延長が伸びるのは確実である.
*本発見は,非常に困難な探検方法である,ケイブダイビングでしかたどり着けなかった秋芳洞第7新洞に,通常の探検方法でたどり着くことが可能であることを明らかにした.今まで,ケイブダイビングでのみ到達が可能であった洞窟に,他の洞窟から連結した例は日本においては皆無である.
* 色素追跡でしか確かめられていなかった秋芳洞−葛ヶ穴水系が,現実に連結したことにより,秋芳洞および秋吉台の水系の研究に大きな功績を果たすものと考えられる.
発見までの過程
2月28日
石原,中野が葛ヶ穴の水位が通常時より約-3〜4mと異常に減っていることを発見.秋芳洞第7新洞とつながる可能性のある葛ヶ穴下流側では,強い風が天井高30-50cm,幅数mの通路の奥に吸い込まれているのを確認した.同時に葛ヶ穴の源流である,上流側もまったく水が無く,200m程続いていたのを確認した.(写真はコネクション部の匍匐前進)
3月1日
12:10 上記の2人に山口大学洞穴研究会会長の大岡を加え,秋吉台科学博物館の配川武彦氏に相談,この3人で入洞することにし,葛ヶ穴に向かった.13:00 葛ヶ穴東洞口到着,入洞開始
東洞口は極寒山東部に開口し,鉱山の坑口として掘られた人工の入口である.傾斜が30゜の斜洞が70mほど続くため,落石等の注意が必要である.13:15 新洞部分探検開始
前日確認した,葛ヶ穴の最も下流部と考えられていた場所に到達,匍匐前進での探検を開始した.14:40 第7新洞に到達したのを確認
約1時間半の匍匐前進のあと,ほとんど水平で変化が見られなかった天井が高くなってゆき,水流や,上方に伸びる竪穴を確認した.程なく,水流沿いのホール(相対的に広い洞窟空間)中央部の落石にダイビングで使うゴム製のスヌーピーループを発見,ここが秋芳洞の第7新洞であることを確信し,第7サンプ(第6新洞に続くダイビングのガイドラインが設置してあるはずの場所)までの探検を開始した.(写真は発見されたスヌーピーループのホール)
15:00 鍾乳石のプール到達
水深2m以上のプール(洞窟内にある池)に鍾乳石が水面近くまで発達しているところに到達.石原は,秋芳洞緊急調査隊(1993)の報告書にこの鍾乳石の写真があったことを覚えていたので,第7新洞の確実な証拠となると考え,写真撮影を行った.(写真)
15:10 石原が第7サンプまで向けて探検開始
中野,大岡がプールを泳ぎ渡ることを恐れたため,石原が一人でサンプを目指して探検する.途中,獣骨や,赤カエルなどを確認.数カ所で写真を撮影した.15:30 石原,撤退開始
再び水が多くなり,首近くまで水に漬かる場所に到達.大岡たちの待つプールに帰還する時間を言うのを忘れて来ていたため,引き返し始める.歩測を行い,プールから大体500m程探検したことがわかる.15:45 石原,鍾乳石のプールに到着
16:00 全員で撤収開始
再び匍匐前進で葛ヶ穴に向けて帰り始める.17:20 葛ヶ穴到達
葛ヶ穴の最下流部であった場所に到達.17:40 出洞完了
葛ヶ穴東洞口から出洞完了.秋吉台科学博物館に連絡をする.
葛ヶ穴−第7新洞連結部分の洞内の概要
葛ヶ穴東洞口から入洞し,CAVE 88 PROJECT(1998)の葛ヶ穴測量図で水没しているとされている部分に行くと,強い風が吸い込まれていることが感じられ,奥には空間があることが予想された.
普段は水没しているこの場所にはまったく水はなく,洞窟は斜めに約1mほど下っている.水流で流れ込んだと思われる木の破片,針金等が洞のあちこちに引っかかっていた.数mで再び洞は上向きになり,ようやく座れるくらいの空間になる.ここまでで,新しく発見された洞は約20mである.
ここを過ぎると洞は天井高30-50cm,幅数m-10m程度の空間で,洞床には石灰岩礫(数cm〜10cm)が見られる水平な洞窟になる.天井はほぼ平らであるが,ときおりポケットと呼ばれるくぼみが認められた.洞窟の向きはほぼ南西に向かっており,川のようにゆるやかに蛇行する.ここから約1時間30分?10分の間は天井が低く,匍匐前進で進まねばならない.天井には増水時にはそこまで水くるらしく,細かい泥が乾いてへばりついている.洞窟の床の礫の堆積する場所によって,ところどころ,座れる程度の空間ができたり,体がぎりぎり通るくらいの隙間になったりし,そのたびに前進するルートを選び直さなければならなかった.
匍匐前進の区間の全行程の2/3を過ぎると,洞窟の床の礫が深くえぐれている場所が見られるようになる.河岸段丘のような景観を示す.
水平であった天井も凹凸が出始めるようになってすぐ,今まで進んできた洞窟は,葛ヶ穴からの水流で形成されたものではないと思われる支洞とぶつかる.この支洞はほぼ東方向に向かって開いており,径数cm程度の黒い礫がそちらから流れてきて堆積していて,ここより下流はくずがあな葛ヶ穴側からの石灰岩礫と,これらの礫が混ざって堆積するようになる.この黒い礫は非石灰岩からなると思われる.
この支洞との分岐から,洞窟はほぼ西方向に向きを変え,100m程度行くと天井が3-5mとだんだん高くなる.この付近になると,水流が洞窟の南側から流れているのが見られるようになり,天井には上方に伸びる竪穴がある.
さらに数10m行くと天井高5-7m,幅7-8mの通路状のホールとなる.このホールの床にある落石にスヌーピーループというダイビングで使うゴムの輪が発見され,そこが秋芳洞第7新洞であることが確認された.また,ここから200mほど西に進むと,再び天井が低くなり,その天井の岩に秋芳洞緊急調査隊でたどり着いた最終地点の証拠であるスヌーピーループも発見された.
そこからさらに100m程行くと,天井が低くなり,水深の深いプールに着く.水深は2m以上あり,20m程は泳ぐ必要がある.この場所には大きな鍾乳石が水面近くまで発達している場所であり,秋芳洞緊急調査隊報告書(1993)に示されている場所でもある.ここから約200mぐらいは天井が高く,時々南や北に折れ曲がりながら,全体としては東方向に向く通路となる.進行方向に対する洞窟の断面は主として南側に高く,北側に低い.したがって,水流は洞窟の北側を流れている.洞窟の床は数cm程度の礫であり,やや高くなったところには泥質や砂質堆積物が見られる.それらの堆積物の上にはいくつか足跡が見られた.また,あるホールには体長7-8cmぐらいのカエルがいるのを発見した.大きな鍾乳石のあるプールから約500mで再び天井が低くなり,這うように進むが,ここで探検を終了した.終わりに
本コネクション部は,普段は水没しており,特定の季節のみに通過が可能になると思われる.したがって,最も水没の危険が高い,くずがあな葛ヶ穴から20mほどの区間の工作が行われない限り,入洞時に閉じ込められる可能性がある.安易な入洞は避ける必要がある.
文献
CAVE 88 PROJECT,1998,葛ヶ穴の調査報告.山口ケイビングクラブ会報,vol.33,4-10.
秋芳洞緊急調査隊,1993,秋芳洞緊急調査隊報告書.69p.
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