洞窟の成因
1 洞窟の発達する場所

 洞窟は地下水面を基準として分けられた,さまざまなゾーン(帯)によって特徴的に溶食,拡大するとされている.以下に各ゾーンでの拡大の仕組みを説明する.

 フレアティック・ゾーン Phreatic zone

地下水面より下位の,すべての通路が水に満たされた岩石帯(phreatic zone:飽和水帯,もしくは飽和帯と呼ばれる).一般に,フレアティック・ゾーンは,上部帯(浅飽和水帯:shallow phreatic),中部帯(深飽和水帯:deep phreatic,bathyphreatc),下部帯(停滞飽和水帯:stagnant phreatc)に分けられる.地下水面は飽和帯の上限である.
 飽和水帯による溶食は,洞壁,洞床,天井部に均等に起こることが特徴である.ゆえに空洞の形は一般に断面が円形を呈した管形状のことが多い.通路の沿って地下水の流れに影響する節理や地層面がある場合には,楕円形や円盤形を示すこともある.洞窟の初期形成段階において最も重要な溶食過程である.


 エピフレアティック・ゾーン Epiphreatic zone

 気候変動などにより地下水面が上下動する範囲.epiphreatic zone,floodwater zoneも同じ.
 
 ベイドース・ゾーン Vadose zone
 地下水面より上部で,一部を水に満たされる時があるゾーン.地表面から地下水面までの土壌間隙が完全に水で満たされている状態になっておらず,水と空気の両方で満たされている.循環水帯は,一般に下位に向かって,土壌,subcutaneousもしくはepikarstic zone(岩と土壌の間のゾーン),free-draining percolation zoneに分けられる.
 不飽和帯では地下水の流速が速く,溶食作用とともに機械的は侵食作用もより大きく行われる.


 パラジェネシス Paragenesis

 洞窟形成後,堆積物で空洞が埋められていく時に,堆積物と母岩の間を流れる水の溶食によってできる形態,その過程をパラジェネシスと言う.水文環境としてはフレアティックなので,溶食形態は似ているが,割れ目ができなくてもできること,上方によく形成されること,空洞に堆積物が残っていることが特徴である.パラジェネシスでできる洞窟空間は一般にトレンチ状になるとされている.アメリカのFlint Mammoth Cave Systemの大きなキャニオンのいくつかは,この過程でできたと考えられている.
コラム カルスト帯水層の用語

Aquifer:アクイファ.帯水層.十分に地下水が伝わることができる浸透性のある岩体で,この水が井戸や湧泉として働くもの.

Aquifuge:アクイフュージ.非透水層.水を吸収し,浸透することができない岩体.

Epiphreas:エピフレアス.気候の変動によって変動する地下水面レベルの垂直的なゾーン.エピフレアティック・ゾーンやフラッドウォーター・ゾーンとも言われる.

Subcutaneous zone:サブキューテイナス・ゾーン.一般的に強く風化した岩石で,土壌よりも下位で,相対的に風化していないカルスト・アクイファの岩体よりも上位にあるゾーン.(エピカルストおよびベイドースゾーンを見よ)


 

 



2 洞窟発達過程
 洞窟空間拡大の成因は,前章のような各ゾーンに依存して起こるとした.これを物語式に説明すると,以下のようになる.
 (1)フレアティック環境下において,節理や断層に沿って空間が発達する.
 (2)地下水面が下がり,下方への侵食が始まる.
 (3)水面が安定した状態で,エピフレアティック環境による洞窟の拡大が起こる.
 (4)水流が堆積物を運んできて,空洞が埋められる.
 (5)パラジェネシスによる洞窟の拡大が起こる.
 (6)堆積物が洗い流され,二次生成物が発達する.

この過程は,何らかの要因によって(3)から(1)に戻ったり,(6)から(1)に戻ったりすることがありうる.それらは外因的な気候変動や内因的な洞窟の崩落などによる可能性がある.